Saturday, July 1, 2006

Jerry Uelsmann











Jerry Uelsmann (ジェリー・ユルズマン、Jerry N. Uelsmann、ジェリー N. ユルズマン)
1934年ミシガン州 (Michigan) デトロイト (Detroit) 生まれの写真家で、20世紀のアメリカを代表するフォトモンタージュのマスター。
フロリダ州 (Florida) のゲインズビル (Gainesville) 在住。

パブリック・スクールに通っていた14歳の頃に写真に興味を持ったそうで、結婚式の写真撮影をするスタジオでアシスタントのバイトを始め、デトロイト中心部にあるクーリー高校 (Cooley High School) に通う頃には式のスタジオ写真を撮影するまでになっていたそうだ。

1955年、ロチェスター工科大学 (Rochester Institute of Technology, RIT) に進学。
ジョージ・イーストマン・ハウス (George Eastman House) のディレクターだったボーモント・ ニューホール (Beaumont Newhall)、ラルフ・ハタズリー (Ralph Hattersley)、そしてマイナー・ホワイト (Minor White) から学び、特にハタズリーとホワイトから影響を受けたとのこと。
また、当時RITで写真を学んでいた学生の中には、ブルース・デヴィッドソン (Bruce Davidson) やピート・ターナー (Pete Turner) やカール・チアレンザ (Carl Chiarenza) やピーター・C・バネル (Peter C.Bunnell) がいて、写真について様々な議論が交わせる刺戟的な学生生活を過ごすことができたという。

RITでB.F.Aを取得した後、マイナー・ホワイトから君の進みたい道に必要なものをヘンリー・ホームズ・スミス (Henry Holmes Smith) ――モホリ=ナジ・ラ―スロー (Moholy-Nagy László) に影響を受け、そのモホリ=ナジに招聘されニュー・バウハウス (New Bauhaus) で教鞭を執ったことのある写真家――に学ぶべきだという助言に従い、スミスが教鞭を執っているインディアナ大学 (Indiana University) へと進み、M.S.とM.F.Aを取得し、1960年に卒業。

同年、ヴァン・デレン・コーク (Van Deren Coke) からの誘いを受け、フロリダ大学 (University of Florida) で写真の講義を開始。
1967年にニューヨーク近代美術館 (The Museum of Modern Art, New York) で開催した個展は、ジェリー・ユルズマンの出発点となる記念すべきものになった。
1974年、フロリダ大学の教授に昇進。
1980年か1981年に日本大学芸術学部客員教授として教壇に立ったらしいのだが、探しても日本側からの情報が見つからない。
1985年、フロリダ大学に写真を学ぶためにやってきたマギー・テイラー (Maggie Taylor) と出会う。
1989年、マギー・テイラーと結婚。
ユルズマンは現在教職を退いており、フロリダ州ゲインズビルでマギー・テイラーと共に暮らしている。

ジェリー・ユルズマンとマギー・テイラーは共に複数のイメージをコラージュして別の新たなイメージを作り出すという点においては共通しているが、ユルズマンがアナログなコラージュ手法にこだわりを見せているのに対し、テイラーはデジタルコラージュで作品を制作しており、手法に関しては対照的となっている。
また、ユルズマンとテイラーはこれまでに作品の制作においてコラボレートしたことがないという。

ユルズマンのコラージュの手法はとりあえずおいておくとして、写真の印象はやはりというか、影響を受けたというだけあってマイナー・ホワイト (Minor White) の撮る風景写真と似たものを感じる。
ユルズマンが初期に影響を受けた写真家には、エドワード・ウェストン (Edward Weston)、ウィン・バロック (Wynn Bullock)、フレデリック・ソマー (Frederic Sommer)、ハリー・キャラハン (Harry Callahan) らがいるそうで、マイナー・ホワイトはバロックと同じくウェストンの影響を受けた写真家であったということを考えると、納得のいく写真家の名前が挙がっているといったところだろう。
名前が挙がっている訳ではないがコラージュや実験的手法では、バーバラ・モーガン (Barbara Morgan)、カーロッタ・コープロン (Carlotta Corpron)、クラレンス・ジョン・ラフリン (Clarence John Laughlin)、エドムンド・テスケ (Edmund Teske)、ヴァル・テルバーグ (Val Telberg) といった先行するアメリカの実験的作風の写真家からも何らかの影響を受けているのではないかと思われる。

例えば、少し前にエントリを立てた英国のドミニク・ルーゼ (Dominic Rouse) などのデジタル・フォトグラファの作風を考えた時、その影響元へと遡行していけば、シュルレアリスムの影響等というのもあるだろうが、おそらくこのジェリー・ユルズマンにもぶつかるのではないだろうか。
この系譜に連なっているような写真家や美術作家は、昔のシュルレアリストたちのギクシャクしたコラージュ感覚に比べてかなりこなれ写真の合成をしていて、あのギクシャクした感じが好きな僕としては、このユルズマンなどは少しあっさりしているかなと思わなくもないのだが、デジタルでイメージを加工・合成できる今の人たちの作品に比べると、まだ何かしら葛藤のようなものがかすかに感じられる。


ポストしたのは、

"Untitled" (1966)
"Untitled" (1972)
"Small Woods Where I Met Myself" (1967)
"Marilynn and the Sheep" (1964)
"Untitled" (1973)
"Untitled" (1976)
"Untitled" (1980)
"Untitled" (1982)
"Untitled" (1980)
"Untitled" (1968)

の10点。


《関連エントリ》
Maggie Taylor


Jerry Uelsmann
Wikipedia
George Eastman House Aaron Siskind, Jerry Uelsman Series
ZoneZero
Masters of Photography
Robert Klein Gallery » 20th Century Photographers » Uelsmann, Jerry
Carl Solway Gallery
Jerry Uelsmann Interview

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