Friday, May 5, 2006

Oscar G. Mason (O. G. Mason)





Oscar G. Mason (O. G. Mason、オスカー・G・メイソン)
1830年生まれ、1921年3月16日没。
アメリカの写真家、レントゲン技師。

メイソンに関する情報はあまり残っていないらしく、1850年創業のミード・ブラザースというギャラリーで働いていたという記録が残っている。
また、1860年代中頃、しばらくニューヨークを離れ、バーモント州 (Vermont) のワシントン郡 (Washington County) にあるノースフィールド (Northfield) やマサチューセッツ州 (Massachusetts) のスプリングフィールド (Springfield) で2、3年過ごしたこともあるらしいのだが、その間、写真家として働いていたかどうかまでは分かっていない。
が、1856年頃には既にO. G. メーソン & カンパニー (O. G. Mason & Company) という会社を経営していたという。

ベルビュー写真部 (Bellevue Photographic Department ) はベルヴュー 病院内に設置された部署で、一般病院の写真を記録する部署としては最初のものだった。
1868年から始動し始めたたこの部署に、どういう経緯からかは分からないがメイソンは勤め始め、1869年には1200以上のプリントを制作している。
メイソンの仕事の中には身元不明の死体を撮影することも含まれていた。
ポストした写真はそうした業務で撮影されたもので、ネットで検索すると他にも撮影された写真を見ることが出来るが、重度の皮膚病患者を撮影したものがほとんどなので、見慣れない方は閲覧注意。


写真家のジョエル=ピーター・ウィトキン (Joel-Peter Witkin) は南北戦争時代の未知の写真を探す過程でスタンリー・B・バーンズ (Stanley B. Burns) という医学博士に出会う。
ウィトキンがたくさんの写真の中から選び出したものがことごとくバーンズ博士の個人的なコレクション由来のものだったのである。
バーンズ博士は医学に関する膨大なコレクションを有しており、ウィトキンは多くの珍しい写真を見せてもらうことが出来た。
この出会いから生まれたのがウィトキンが編んだ 『医学写真傑作集 (Masterpieces of Medical Photography: Selections from the Burns Archive)』 という写真集。

1枚目にポストした写真はネットをふらついている時にたまに見かけることがあるが、"Bellevue Venus" というタイトルで知られている1878年に撮影された写真で、ウィトキンが編集した 『医学写真傑作集』 に収録されており、この写真集を通して有名になったもの (なのではないかと思う)。
日本では、伊藤俊治が1993年に出した 『聖なる肉体』 という著書のカヴァにその写真が使用されたこともあるので、書店でそれを見かけたという方も中にはおられるかもしれない。
実際、私が出合ったのもその 『聖なる肉体』 で、"HOLY BODY" という英題が重ね合わされたそのカヴァ・イメージを見た時、そこに写ったフリークスと思しき女性の裸体姿と "HOLY" という単語から安直にアレハンドロ・ホドロフスキー (Alexandro Jodorowsky) の 『ホーリー・マウンテン (The Holy Mountain)』、『エル・トポ』 を思い浮かべたのを憶えている。
当時、書店並ぶはずのないものが書店に並んでいる、と感じるくらいに強烈な印象をカヴァから受けたのだけど、さすがに今は、何度も見て見慣れてしまっているので、以前のような強烈な印象を感じることはなくなってしまった。
しかし、少しふくよかな上半身の美しさとウルトラ怪獣のグロテスクな下半身をもった若い女性の姿へのグロテスクでありながら美しいというどこか矛盾したような印象の方は今も当時と変わらない。
この "Bellevue Venus" がどういった来歴のものであるのか、『聖なる肉体』 から引用しておこう。
・・・・・・一八七八年にニューヨークで撮影された、猩紅熱で下半身が象皮症になった若い女性が全裸で、頭部だけ布でおおわれた不思議な雰囲気に満ちた写真がある。
象皮症の多くは体内に入ってリンパ腺の流れをとめる寄生虫や、熱病によって起こる。この若い女性は寄生虫ではなく、八歳の時にこじらせた猩紅熱によってこうした姿になってしまった。その後、一一年あまり細菌に感染したり、傷が悪化したりして彼女の足はグロテスクきわまりないものとなったが、上半身だけは普通の女性と変わらない、いや普通の女性以上の美しい肉体を保持していたのである。そしてこの現実離れしたアンバランスさが写真のなかにこの時代の医学と肉体の象徴のように刻印されることになる。 - 伊藤俊治 『聖なる肉体』
そう、この「現実離れしたアンバランス」なイメージが見るものを捉えて放さないのだ。
ウィトキンはこの写真が収録された 『医学写真傑作集』 の序文に次のように書いている。
これらのイメージは人類学的にも、歴史学的にも、文化史的にも非常に貴重なものである。なぜそう思ったかといえば、それらが時代の層を化石のように単に生きのびてきたからというのではなく、そこには遠い過去の身体の衝動や意識の転移や肉体的な形象になった感情の欲求が生きのびていたからなのである。これらの傑作は人間創造の歴史の一部である。これらのイメージは趣味や思考の歴史とは無関係だし、あえていえば我々人間の最も高度な知識を完成させることと強くむすびついているといえるかもしれない。画家や彫刻家達の作品は、彼らがどのような傑作を生み出そうと、最終的には想像力の産物である。しかし、我々が写真と呼ぶ、最も迫真的なリアリティの表象を生みだす永遠の記録の鏡は想像力を超えたものの産物であり、その鏡をもったのは我々の時代が初めてなのである。けれども我々はまた我々自身の暗闇のイメージに恐れを抱き続けている。たとえそれらが遠い過去に投影されたものであろうとも。ここに示された写真はラファエル前派の虚構の絵画でもなければ天国や地獄の超現実の幽霊でもない。彼らは過去からの現在の我々に対する贈り物なのである。 - 伊藤俊治 『聖なる肉体』
今回4点の写真をポストしたが、それらはすべて、ウィトキンの言うように、まさに 「賜物」 なのである。
1枚目と2枚目に同様の症状を持った女性の写真を続けてポストしたが、同一人物の様でもあれば別人の様でもあって、何度も両者を見比べてみたが、見比べただけではどちらなのか判断できなかった。
2枚目が症状が進行した後の写真に見えなくもないのたが、そもそもの体型が違っているようにも見えるのだ。
詳しいことをご存知の方があれば、お教え頂ければと思う。
Wikipedia
THE BURNS ARCHIVE
More excerpts from Endurance and Suffering - PDF!!!
drtenge: Various atlases of the diseases of the skin by George Henry Fox with photographs by O. G. Mason
elephantiasis


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