Thursday, June 29, 2006

Serge Lutens










"GENERIC IMAGE (真赤な太陽を抱いて泳ぐ女性)", 1980

Serge Lutens (セルジュ・ルタンス)
1942年にフランス北端ノール=パ・ド・カレー地域圏 (Nord-Pas-de-Calais) の首府リール (Lille) で生まれた。
フランスの写真家、映像作家、ヘアスタイリスト、香水のアートディレクター、ファッションデザイナー。

14歳の時、リールのヘアサロンに見習いとして雇われ、キャリアをスタートさせた。
友人でメイクの練習をしたり、写真の実験をするのにモデルのようにポーズを取らせ撮影するなど、独力でキャリアアップを重ね、1962年、パリへ移住し、ヴォーグ誌にメイクやヘアやジュエリーのスタイリストとして雇われた。
1960年代を通し、リチャード・アヴェドン (Richard Avedon)、ボブ・リチャードソン (Bob Richardson)、アーヴィング・ペン (Irving Penn) といったフォトグラファとコラボレートしていくことになる。
1967年 (1968年) から、クリスチャン・ディオールからの依頼でメイクアップの商品開発に携るようになり、12年に渡って同社のために働いた。
ディオールでの仕事の合間に世界各国を旅し、インスピレーションの糧としたそうで、その中でも、1968年のモロッコへの旅と1970年の日本への旅は自分にとって重要な旅となったと後に語っている。

1980年、セルジュ・ルタンスは1965年のアメリカ進出から始まった世界進出の更なるステップを目指す資生堂から、イメージ・クリエイターに迎え入れられ、新たなイメージ作りに取り組むことになり、両者の関係は2000年まで20年続く。
資生堂名誉会長の福原義春は当時のことを回想し、次のように語っている。

1980年に資生堂が彼と契約を結ぶとすぐに、私たちの濃密な時間が始まった。
強い思いをぶつけ合う連日連夜のディスカッションは、国内外のクリエイターとのコラボレーションの経験を積んできた私にとっても驚きの連続であった。
彼の最初の狙いは、世の中にショックを与えることだった。当時の国際的ブランドは、色彩でアイデンティティーを確立するという手法が当たり前だったが、私たちはそれをしなかった。
セルジュ・ルタンスは「まず、日本を象徴する太陽、その円のイメージを確立する」という最初の広告表現を提案した。
太陽と円のコンセプトは、ロラン・バルト『表徴の帝国』にヒントを得たという。
華麗なイメージを強い哲学が支えていたのだ。
「GENERIC IMAGE(真赤な太陽を抱いて泳ぐ女性)」はこうして生まれた。
その美しさは、世界中の女性たちに新しいSHISEIDOを伝えるのに十分な強さをもっていた。
続いてセルジュ・ルタンスは、円=SHISEIDOのイメージが浸透していくにつれて、円の大きさを少しずつ小さくして、ついにはモデルの女性が円の外に出るまでの一連のシリーズを制作した。
この過程で、イメージは脳裏に焼きついて記憶になった。
その情報は、意識下においても新しい情報の感受と生成を助け、その次に現れるイメージ、まだ見ぬイメージまでも映像にしてしまったのではないか。
この「イメージのリフレイン」という大胆かつ細心な戦略は私を魅了した。
セルジュ・ルタンスは自らを「時の旅人」と称したことがある。
私はこのごろ、自分もあのときから、彼と同じ記憶を求めて時空を超えて旅しているのかもしれない、とさえ思うことがあるのだ。

回想の中で言及されている "GENERIC IMAGE (真赤な太陽を抱いて泳ぐ女性)" はこのエントリで一番最初にポストしてあるイメージ。
セルジュ・ルタンスが "GENERIC IMAGE (真赤な太陽を抱いて泳ぐ女性)" を制作するに当たってコンセプトとした 「日本を象徴する太陽、その円のイメージ」 はロラン・バルトの 『表徴の帝国』 からヒントを得ているという。
その 『表徴の帝国』 には 「中心 - 都市 虚空の中心」 と題された有名な章があり、その後半部でバルトは次のように述べている。

わたしの語ろうとしている都市 (東京) は、次のような貴重な逆説、《いかにもこの都市は中心をもっている。だが、その中心は空虚である》という逆説を示してくれる。禁域であって、しかも同時にどうでもいい場所、緑に蔽われ、お濠によって防禦されていて、文字通り誰からも見られることのない皇帝の住む御所、そのまわりをこの都市の全体がめぐっている。毎日毎日、鉄砲玉のように急速に精力的ですばやい運転で、タクシーはこの円環を迂回している。この円の低い頂点、不可視性の可視的な形、これは神聖なる《無》をかくしている。現代の最も強大な二大都市の一つであるこの首都は、城壁と濠水と屋根と樹木との不透明な環のまわりに造られているのだが、しかしその中心そのものは、なんらかの力を放射するためにそこにあるのではなく、都市のいっさいの動きに空虚な中心点を与えて、動きの循環に永久の迂回を強制するために、そこにあるのである。このようにして、空虚な主体にそって、〔非現実的で〕想像的な世界が迂回してはまた方向を変えながら、循環しつつ広がっているのである。
- ロラン・バルト 『表徴の帝国』

La ville dont je parle (Tokyo) présente ce paradoxe précieux : elle possède bien un centre, mais ce centre est vide. Toute la ville tourne autour d'un lieu à la fois interdit et indifférent, demeure masquée sous la verdure, défendue par des fossés d'eau, habitée par un empereur qu’on ne voit jamais, c'est-à-dire, à la lettre, par on ne sait qui. Journellement, de leur conduite preste, énergique, expéditive comme la ligne d'un tir, les taxis évitent ce cercle, dont la crête basse, forme visible de l'invisibilité, cache le "rien" sacré. L'une des deux villes les plus puissantes de la modernité est donc construite autour d'un anneau opaque de murailles, d'eaux, de toits et d'arbres, dont le centre lui-même n'est plus qu'une idée évaporée, subsistant là non pour irradier quelque pouvoir, mais pour donner à tout le mouvement urbain l'appui de son vide central, obligeant la circulation à un perpétuel dévoiement. De cette manière, nous dit-on, l'imaginaire se déploie circulairement, par détours et retours le long d'un sujet vide.
- Roland Barthes "L'Empire des signes"

この 『表徴の帝国』 からの引用を踏まえ、福原義春の回想を読み返すと面白い。


Parfums Serge Lutens - Le Site Officiel de la marque Serge Lutens
Wikipedia
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